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2017年12月17日 (日)

映画「荒木又右衛門 決闘鍵屋の辻」

「荒木又右衛門 決闘鍵屋の辻」

監督: 森一生
脚本: 黒澤明
撮影: 山崎一雄
美術: 松山崇
音楽: 西梧郎

出演: 三船敏郎,片山明彦,小川虎之助,加東大介,高堂国典,杉寛,志村喬,
千秋実,浜田百合子,左卜全,徳大寺伸

時間: 82分 (1時間22分)
製作年: 1952年/日本

(満足度:☆☆☆☆+)(5個で満点)
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弟の仇討ちをすることになった渡邊数馬(片山明彦)は脱藩し、荒木又右衛門
(三船敏郎)に助太刀を依頼する。一行は宿敵の河合又五郎(千秋実)の居所を
捜索の旅の果てに突き止める。河合が江戸へ戻る時に通る道中"鍵屋の辻"で
待ち伏せをするが。。

 

 黒澤明脚本によるセミドキュメンタリー風の異色時代劇。

  「戦国無頼」(1952)とテイストにおいて親和性がかなり高い。これは、脚本に
本作と同じく黒澤明が関わっているという点と、その生涯において常にリアリズムを
追求した黒澤の『武士』というものへの視点と、『"命を掛ける"とは、どういうことを
意味するのか』という問いかけが登場人物達の行動動機の強い裏付けと、物語の
確固たる骨子となっている点が共通項としてあるからだろう。

 黒澤は、「武士」の何事も起きない単なる日常を徹底的にリアルに映画に
してみたい
と語っていたそうであるが、本作においては『仇討ち』とはいかに
して行われるのか、"人"は、どのようにして、いかにして、"人"を斬ろうと
するのか
を詳細に検証するかのように物語はじっくりと進んでいく。

 三船敏郎演じる助っ人侍の荒木又右衛門は事あるごと斬るときの心構えを
同志達に説く。

 監督の森一生は、黒澤明とはプライベートにおいても深い交友があったことで
知られている。

 「"本物の"仇討ちを描く」意気込みに溢れた黒澤の脚本を活かそうとする
丁寧な演出が作品の随所に強く感じ取れる。

 脚本と監督のどちらも充分な力量を持ち、キャリアを持つがゆえに別々の脳を
持つスタンドアロンな別の人間が組み上げた組み細工である映画というものの
面白さが出ているとも言える。

 河合又五郎を討つ為に延々と旅を続ける荒木又右衛門と渡邊数馬達。

 数馬は、弟が殺された敵討ちとはいえ、復讐の鬼となっているわけではなく、
寵愛を受けていた主君の「河合を討て」という遺言によるものであり、荒木又右衛門は
手助けの為に恐らく命を捨てることになる。

 脚本上においては、志村喬演じる河合甚左衛門が荒木又右衛門と盟友であり
手練れである点を前半で強調し

 仇討ちの大義が本当にあるのか?

という命題を自分達に投げかけている荒木達の徒労感を描くことでドラマを
盛り上げているのだが目的地に到達するまではかなり長く感じてしまう。

 「生まれて初めて人を斬る(そして、恐らく自分は死ぬ)」ことにガチガチになる
(市井の人間=観客を象徴する)森孫右衛門をえんじる加東大介は、とうとう
仇討ちが出来ることと、つまり、自分が死ぬ(であろう)ことの大きな矛盾
に葛藤する好演を見せている。

 一時間弱であり、脚本も、松山崇の美術も、山崎一雄による撮影も素晴らしく、
演出も卒がない。だが、長く感じるのは、リアリズムを尊重する余り、登場人物達の
内面描写に斬り込むことを十分にしなかったからなのか。

 不朽の名作「七人の侍」(1954)が放たれるのは本作の二年後のことである。

 本作は、隠れた名作であり、且つ優れた逸品と言えるだろう。

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