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2018年2月12日 (月)

映画「斬る」

「斬る」

原案: 山本周五郎
監督: 岡本喜八
脚本: 岡本喜八,村尾昭
撮影: 西垣六郎
音楽: 佐藤勝
美術: 阿久根厳
編集: 黒岩義民
殺陣: 久世竜

時間: 114分 (1時間54分)
製作年: 1968年/日本 東宝

(満足度:☆☆☆☆)(5個で満点)
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上意討ちを果たした七人は藩を手中に治める家老の手により浪人達を集めた
刺客を送り込まれる。浪人達はさらに逆賊となった七人もろとも討伐される側に、、

 

 序盤の最大の見せ場となる上意討ちのシーンは黒澤作品を多分に
意識していると思われる殺陣とカメラワークだ。「七人の侍」(1954)を彷彿と
させる"三船"ばりなダイナミックな上段構えの刀の使い方と「用心棒」(1961)
さながらのカメラワーク。役者達が地味な印象を与えるが準主役の岸田森を
含めて"剣"に心得のある役者を使ったのだろうか。そう思えるような演技指導
ではできないような見事なシーンとなっている。

 主役の仲代達也演じる男は頭は切れ腕も立つが所謂スーパーマン的な
扱いではなく、後半では首魁の手にかかり容赦ない拷問に晒される。

 仲代一人では出来ない限界を明確に見せることで、東野英二郎・岸田森等
が浮かび上がり、後半の最大の見せ場の乱戦へとなだれこんでいく。

 仲代演じる男はお上に絶対服従することで存在する「侍」のくだらなさ
何度も説くが、日本のサラリーマン社会を揶揄していることは明白であり、
多勢に歯向かうことの恐怖、心の弱さ、疑念、嫉妬といったものが歯車を狂わせて
いくという意味では時代劇というよりも、武家時代を舞台とした現代劇であり、
人間の心の弱さからくる行動様式をエンターテイメントにまで昇華しているという
意味では 深作欣二の秀作「狼と豚と人間」(1964)に力学的方向性が似ている

 志を持ってお上に歯向かい、徹底的に孤立していく様と内部崩壊の危機・討伐を
命じられた浪人達の立場の相違の無さと共感する様は見ていて「二・二六事件」
における青年将校達を彷彿とさせた。

 同名の作品に柴田鎌三郎原作、三隅研次監督作品の「斬る」(1962)がある。
こちらは大映の制作で独特の世界観を構築していて内容も主旨も全く異なる
作品であるが"侍"というワールドを一言で表すキャッチーなキーワードとして
今後も使われていくタイトルなのかもしれない。
 

 本作が制作された1968年は「2001年 宇宙の旅」が公開された年でもある。

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