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2018年3月21日 (水)

映画「朱の花粉」

「朱の花粉」


原作: 舟橋聖一
監督: 大庭秀雄
脚本: 柳井隆雄,大庭秀雄,高橋治
撮影: 厚田雄春
音楽: 池田正義
美術: 芳野尹孝
録音: 栗田周十郎
照明: 石渡健蔵
出演: 有馬稲子,佐田啓二,杉田弘子,山内明,津川雅彦

時間: 82分 (1時間22分)
製作年: 1960年/日本 松竹

(満足度:☆☆☆☆)(5個で満点)
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 菊絵(有馬稲子)は女学校時代、教師の武中(佐田啓二)と恋仲であったが、
戦争は二人を引き離した。菊絵は危険思想の持ち主として目をつけられ逮捕
された武中を救うために憲兵の浜名(山内明)の求婚を受け入れる。
やがて戦争は終わり菊絵は復員していた武中と再会するが。。

 
 戦中の出陣式のシーンの民衆の高揚感とお互いに"空気"を読みう時代と、
戦後の混乱の雰囲気は画面にとてもよく出ていて、

 「実際にもこんな感じだったのだろう」

と往時を思わせるリアリティがある。

 撮影は、小津組の常連にして邦画史に巨大な足跡を燦然と残す厚田雄春
なので朝飯前の仕事なのかもしれない。

 佐田啓二は、女性にモテる役を多く演じているが、いつもどこか飄々と
している。恐らくその飄々振りが女性を一層夢中にさせ、男性から見ても嫌味が
なくてある種の独特感がある。37才という若さで事故に遭い他界してしまったが、
長生きしていたらどんな俳優になっていただろう。全くもって惜しいことだ

 有馬稲子は、「幸せになれない女」が本当によく似合う。そして、それが
実に"絵"になる。
満面の笑みで幸せを掴んだ彼女も素敵であるが彼女には
大変申し訳ないが、余り見たくない。

 世の不条理と男の身勝手に翻弄され悔しさをを滲ませた表情こそが有馬であろう。

 「東京暮色」(1957)での男に裏切られたことを認められずに暗闇の波止場で
呆然と佇む後姿の寂しさこそ彼女の本領であろう

 なぜだろうか?

 男や人生というものに幻想を抱き過ぎてしまう結果なのだろうか?

 

 原節子、高峰秀子、山田五十鈴、有馬稲子、、、


 大庭秀雄は今後再評価され観られてよい名監督の一人だろう。


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