映画「アメリカの兵隊」
「アメリカの兵隊」
Der amerikanische Soldat
The American Soldier
監督: ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー
脚本: ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー
撮影: ディートリッヒ・ローマン
音楽: ピア・ラーベン
時間: 80分 (1時間20分) [モノクロ]
製作年: 1970年/西ドイツ
(満足度:☆☆☆☆+)(5個で満点)
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ハードボイルド。
ファスビンダーの「頭の中」に描かれた『世界』の中で、忠実に踊る演者達。
その忠実性と、バレエのようにくるくと動き回る展開そのものが本作の魅力であり
中毒性は高い。ファスビンダーの妄想の世界の住人達と空間という意味では
ある種SFとも言える。
チェックインしたばかりの見知らぬ男に身を任せる女。
「愛している」と言ったその刹那に裏切る女。
人間というものを、「根底から信じていない」主人公。
1時間弱の中編でありながら印象的なシーンが多い。
冒頭、男達の死ぬほど退屈だと言わんばかりにカードに興じるシーン。
序盤の男女二人の車内での会話のシーン。
これらだけでもなぜか「ずっと眺め続けていたい」と思う。
主にホテル室内で行われていく主人公の"お仕事"。
噛み合わない警察組織の上司と部下。
噛み合わない男女の会話。
やはり噛み合わない親子の会話。。
劇中の曲はファスビンダー自身が作曲・作詞したとか。
敢えて、意図的に配合のバランスを崩して酒成分を強引にあげてある酒のように
脳内に鋭く切り込んでくるスコア。
やがて、訪れる美しいラスト。
踊れ、踊れ、踊れ。
実に『酔う』作品。
しかも悪酔い。そして、それがとても心地いい。
クサヤの干物か、スルメでも噛じりながら
大き目のお猪口で冷酒をグイグイと呷るような。
ファスビンダーの作品にはどれにも"酒"が入っている。
原材料は必ずしも上等ではないかもしれないが
『ファスビンダー』
という得濃成分がみっしりと入っている。
本作は70年の制作であるが、本作も含めてファスビンダーの
作品には80年代的な空気を不思議と感じる。
もう一度、冒頭から"がぶ飲み"したい。
そうして、強かに、ベロベロに酔ってしまいたい。
そんな作品。
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