映画「港の日本娘」
「港の日本娘」
原作: 北林透馬
監督: 清水宏
脚本: 陶山密
撮影: 佐々木太郎
作詞: 大木惇夫,野口雨情
作曲: 江口夜詩,高階哲夫
出演: 及川道子,井上雪子,江川宇礼雄,沢蘭子,逢初夢子,
斎藤達雄,南条康雄
時間: 分 (時間分)
製作年: 1933年/日本 松竹鎌田
(満足度:☆☆☆☆+) (5個で満点)
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多感な年頃の娘達の心の機微を戦局が悪化する前の街の風景を交え
繊細な映像で描く。
ヘンリー、砂子、ドラ(愛称)の三人がお互いに気を使う余りに、傷ついていく。
砂子は最初にヘンリーに気を寄せながら、夜の女に身を落とす。
人物の画面からの退場シーンを歩き去るのではなく、舞台のようにフェードアウト
で表現したり、砂子とヘンリーの踊りのシーンで不自然に二人の足に編み物の糸が
絡まったり、全体的に実験的と思われる映像が多い。
少女と青年の三人が一つの淡い時空を共有してからそれぞれが大人になった
後の惨いエゴイズムに塗れた「現実」を主に砂子の視点から描いているのでどこか
夢の中のような非現実感的な描写が本作の描いている「物語」そのものとして
構築されて洗練されている。現在において制作された作品としても十分に通用
して世界中で評価されるであろうプロの仕事だ。
戦前の横浜の街並みの光景の戦後と見まごうばかりの先進性にただただ涙。
船舶の見事さ。人々のハイレベル且つハイセンスな暮らし。
たった十数年間でほとんど何もかも失い、たった十数年間の政治的な
破局を半世紀以上も償い続け、永久に償い続けることも保証しかねない
異常極まる世界を生きてることをワンシーン、ワンシーンごとに思い知る。
1930年代に世界はとてつもなく大きく歩みを間違えて、現在に至るまで
根本的な補正は何らされないままに傷口の空いた世界を我々は生きてることを
本作を含めて『映画』は告発している。
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