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2018年5月13日 (日)

映画「千曲川絶唱」

「千曲川絶唱」


監督: 豊田四郎
脚本: 松山善三
撮影: 岡崎宏三
美術: 幡野豊治郎
編集: 広瀬千鶴
音楽: 佐藤勝
出演: 北大路欣也,宮口精二,星由里子,田中邦衛,都家かつ,いしだあゆみ,
上田忠好,石井伊吉,平幹二朗

時間: 102分 (1時間42分)
製作年: 1967年/日本

(満足度:☆☆☆☆+)(5個で満点)
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トラック運転手の五所川肇(北大路欣也)は、友人と一緒に血液検査を受けたところ
ある病気の兆候が見られた。看護婦の浮田奈美(星由里子)は、五所川に治療を
受けるように説得を試みる。。


 松山善三の脚本、、岡崎宏三の撮影、北大路欣也星由里子の熱演の
アンサンブルを料理する豊田四郎とてもバランスの良い好編

 北大路欣也演じる五所川の病名の発覚と、その理由は、事実の積み重ねと
分析が格段に進んだ21世紀も20年近くが経過しようとしている『今』となっては、
ミス・ディレクションであることはほぼ確定し、それ自体は「良い事」であると
言える。時代はとにもかくにも進んでいるということだから

 本作の真の価値は、物語のベースの大きなミス・ディレクションを正しく
減算したとしても、尚且つマイナスにはならないという"凄さ"に尽きる
だろう
。それゆえに今後も生き残っていく作品の一つと思える。

 自分の運命を悟った五所川を演じる北大路の熱演と、その思いを献身的に
受け止める星由里子演じる奈美の『生きる』ことへの誠実さはタイトルの"絶唱"
に相応しい

 本作の『真価』は、薄幸の肯定なぞにではなく、

 命そのものの現在進行形そのものへの強い肯定

 病になったことすらも肯定しようとするほどの命そのものへの賛歌の振れの
無さにある

 クライマックスであり、白眉であり、映画史に残る名シーンと言っていい奈美の
乗る列車をひたすら追いかける北大路のトラックのシーンの脅威のダイナミズム
は素晴らしいの一言でテーマの追及とも完全に符合する

 本作は、ラストまで随所で"映像で魅せる作品"でもあり、本作における撮影の
岡崎宏三
の貢献は実に大きい。影の主役と言っても決して過言ではない。

 命を奪うほどの病魔に襲われた時に、人は他者を恨めしく思い、辛く当たり、
その事を悔恨し、多くを失った後にようやく命の『尊さ』と日々の人生の素晴らしさに
気が付くパラドックスの映像化への結実。

 北大路欣也と星由里子は、脚本の意図をよく理解し、ただ若くエネルギーが余って
いるということではなく『生きている』ということを絶唱する演技を見せていて作品の
ボルテージと気品を上げていて尚且つ「清々しい」

 いしだあゆみ演じる心までも病魔に侵されてしまった憐れな娘すらも強く内包して
いく『命』そのものの尊さと熱さ。 

 松山善三の脚本は、事態に対しての人の行動に焦点をフォーカスすることに
無駄が無い。だから、「ひき逃げ」(1966)などの地味なテーマの作品であっても一級の
エンターテインメントになり得るのだろう。

 それにしても、自分の琴線の触れる作品への宮口精二の出演の確率の高さよ。
宮口精二出演作品に外れ無し




 観客に何を伝え、見せるべきなのか。

 豊田四郎松山善三岡崎宏三宮口精二は、「知って」いる。


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