映画「ブルークリスマス」
「ブルークリスマス」
監督: 岡本喜八
脚本: 倉本聰
撮影: 木村大作
美術: 竹中和雄
編集: 黒岩義民
音楽: 佐藤勝
出演: 勝野洋,高橋悦史,沖雅也,岡田英次,竹下景子,仲代達矢,大滝秀治,
八千草薫,天本英世,岸田森
時間: 133分 (2時間13分)
製作年: 1978年/日本
(満足度:☆☆☆☆+)(5個で満点)
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世界中で謎の円盤UFOの目撃が増加すると機を同じくして"青い血"を持つ人間
もまた世界的に増加していた。各国政府は秘密裏に青い血の人間を隔離し、
抹殺を謀ろうとしていた。。
撮影の困難さと、予算の限界からの決断だと思えるが、
「映像表現としての超常現象」を気持ちの良いくらいに「バッサリと捨て」て、
人間達の行動に端を発する世の中の異常な状況と、緊迫感を描こうと試み、
そして、成功していることにまずは拍手を送りたい。
"青い血の人間"は、ある理由により血中の成分が変化して青に変わるとか
(劇中ではイカの血液は青色だと述べられている)。
"青色血液人間"を忌み嫌うことから「排除」しようとする世界の表層の描写は
「とても上手く」描かれていて、後年のリアル世界で実際に起こる出来事を適格に
予言していて、時代を先駆けているとさえいえる。
だが、その排除の力と、システムの正体を断定していく後半は、その方向性の
"安易さ"により急速に映画が「つまらなく」なる。
青色血液人間の増殖と、
赤色血液人間との差が
『不明』だから彼らを恐怖の対象として煽る正体が、なぜ"それ"なのだという
結論になるのか。
その『なぜ』をこそ問いただすと、人間達の無知と、無智と、無恥に鋭く警鐘を
鳴らし啓蒙する地点まで行き着く(はず)なのだが本作はそこまで斬り込めていない
ところに『戦後なるもの』の胡散臭い思考停止と70年代という時代のある種の
ヌルさと限界を感じてしまう。それは、日本的なものであるのかどうか、そろそろ
総括できても良いだろう。
さて、ところで、、、
防衛庁の戦闘機の管制室の描写やスクランブルの演出、
夜の高速道路の車中での描写、
主要キャストの竹下恵子と勝野洋のアップの切替し、照り返す光、、
ってこれって、、「某アニメ映画作品」の世界観"そのまんま"ではないか!
カメラアングルや編集の妙に至るまで「なんとなく似ている」レベルではなく
本作から相当に"拝借している"ように思われる。。
綻びや不満な点はあるが、それでも、
うつー人
及び 、
うつー人 の乗り物
を、"一切描かずに製作されたSF作品"としては少なくとも邦画においては
最高峰にして到達点の一つなのではなかろうか。
岡本喜八監督作品として群像劇としても良く出来ており、倉本聰の脚本、
やがて時代のアイコンとなっていく竹下景子の本格デビュー作品、邦画を支え
続けていく至宝となる木村大作の撮影、レジェンドと呼ばれていくであろう個性
豊かな俳優陣。実に多面的に楽しめる作品でもある。
今後、再評価され続け、また上記の「ある理由」により時に着目され、
時代の要所・節目においても注目されていく秀作と言える作品だろう。
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