「平成」の終わりに「昭和」を思う。
『平成』が終わる。
『平成』の終わりに、『昭和』の始まりと終わりについて
ほんの少しだけ、全く取り止めもなく思いを巡らしてみよう。
平成最後の桜を眺めつつ。
(下記の事実関係の記述については基本的にウィキペディア日本語版の
情報に寄っている)
昭和の終わり、それは誰もが
「本当に終わるのか」
「元号が変わるとはどういうことなのか」と
呆然としていたというのが自分から見た世の中の雰囲気だった。
何しろ『昭和』は、1926年の12月25日から始まり、1989年の
1月7日まで約63年間も続いた。
「昭和の始まり」つまり大正の終わりの出来事を概観しても
現代の我々の共通意識に直ぐになりそうな出来事は最早見つけにくい
のかもしれない。前年の1925年に治安維持法が公布されているとか、
その同年にアドルフ・ヒトラーが「我が闘争第1巻」を公表しているとか、
昭和2年となる1927年に国内においては田中義一内閣が成立し、
軍の統制が取れなくなっていく様が加速度的に顕著になっていく。
昭和の始まりとは、将に20世紀の激動の時代の幕開けと呼ぶに
相応しい時代だった。そんな時代に昭和天皇が即位したのは若干
25歳の時だった。
同時代におけるアメリカ合衆国の大統領はカルビン・クーリッジ
(在1923~1929年)で、一般的な知名度は恐らく高くないというよりも
低いだろうが政治家として、歴代の合衆国大統領としての評価はトップ
クラスである。そして、クーリッジの時代、アメリカの経済は大きく
成長し、好景気を謳歌していた。だがその高評価と同時に、後々まで
日米関係に大きな影を落とす排日移民法が成立したのは1924年であり
クーリッジ大統領在任時の時でもある。
さて、1926年の前後の時代に制作された映画で自分が鑑賞している
作品はこんな感じである。
・1925年(大正14年)
「ストライキ」(ソ連)
「戦艦ポチョムキン」 (ソ連)
「ロストワールド」(アメリカ)
・1926年(大正15年/昭和元年)
「掟によって」 (ソ連)
「キートンの大列車追跡」(アメリカ )
「魔術師」(アメリカ)
・1927年(昭和2年)
「キング オブ キングス」(アメリカ)
「三面鏡」(フランス)
次に「昭和の終わり」とは、「手塚治虫(1928-1989)の死」に象徴
されていると見る人もきっと少なくないだろう。平成幕開け直後の2月9日に
死去しているが、昭和の終わりに亡くなっているように自分は記憶して
いた。そう言えば、手塚の死によって昭和が終わった事を実感したとする
記事や、周囲にそんな感想をこぼす友人もいたっけ(最近読んだ
某ムックにも同様の記述を見つけた)。
手塚が大友克洋に大変な脅威を感じたことは有名であり、氏が原作を
手掛け自ら監督をした余りにもエポック的作品で且つ1990年代の幕開け
を強く感じる「AKIRA」(1988)が昭和の終わり、そして80年代の終わりに
公開されている事実は何となく興味深い。
激動と騒乱の時代となった昭和の幕開けの種は当然であるが、
それ以前に上記の通り既に撒かれており、映画という興行作品もまた
時代の終焉と次世代の幕開けは当然のようにリンクしている。
昭和の終わりは多くの日本の国民はテレビ放映の事実上の中止
(全局、崩御による特番への切り替え)にレンタルビデオ店に走った
ことを記憶しているだろう。平成の終わりが来て、これほどまでに
テレビ・新聞の影響力が弱まることを誰が想像出来ただろう。
自分もまた、ただ茫然と世の中と、テレビを眺め、レンタル
ビデオを借り、平成に入ってからは兄が持っていた長渕剛の
「昭和」のCDを何度も聴いていた。
ショーケンこと萩原健一(1950-2019)の死は、たまたま平成の
終わりと重なることとなったが、若き日の氏が主演している傑作
「青春の蹉跌」(1974)を平成が終わる前に、氏の生前に観れた事は
個人的には幸運だったと感じる。
次世代への希望と混乱の種は、当然であるがこれまでの
『歴史』という名の渦と同様に既に撒かれている。後、数年の内に
世代交代も大きく進んでいくことだろう。
終わりと始まりを体験し、繋げていく。或いは、断ち切っていく。
案外、一番ほっとしているのは今上天皇である明仁天皇(第125代)
かもしれない。平成の名の天皇に相応しいお人柄であった。東日本大震災が
発生した数日後に今上天皇が読み上げれたメッセージは多くの国民が心を
打たれ今も強く記憶していることだろう。これからも。
『平成』お疲れ様。さようなら。
生きとし、生ける者、生きた者、皆お疲れ様。
新しい元号と時代の幕開けへようこそ。
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