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2019年5月25日 (土)

映画「Wの悲劇」

「Wの悲劇」

原作: 夏樹静子
監督: 澤井信一郎
脚本: 荒井晴彦,澤井信一郎
撮影: 仙元誠三
美術: 桑名忠之
編集: 西東清明
音楽: 久石譲
出演:薬師丸ひろ子,世良公則,三田佳子,三田村邦彦,
高木美保,蜷川幸雄,志方亜紀子,清水紘治,南美江,草薙幸二郎,西田健,
香野百合子,日野道夫,仲谷昇,梨本勝,福岡翼,須藤甚一郎,藤田恵子

時間: 108分 (1時間48分)
製作年: 1984年(昭和59年)/日本

(満足度:☆☆☆☆+ )(5個で満点)
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 群像劇のように見えて(群像劇でもあるのだが)、どちらかと言うと、
『モザイク』そのもののように見える作品。実際、本作は制作段階の
方向性から"そうなる事"を宿命付けられた作品と言える。

 そして、本作においてはモザイクであることが作品に力強い推進力と
立体感を与えていてステンドガラスのように輝きを与えている。それは
同時にアウトプットされた結果そうなったとも言える。

 監督の澤井信一郎は原作の映画化が目的「ではなく」、薬師丸ひろ子の
「今」を撮りたかったとの事だが、その目的は十分に、ほぼ完全に達成
していて薬師丸を含めた若者達の行動、熱さとのその自然さが本作の
最大の魅力となっている。
 
 原作を無視することを承諾した上で受けたという荒井晴彦の脚本は
原作そのものは劇中劇に押し込め、荒井の手掛ける他の作品とも大きく
共通する「若さを"持て余し"、それ事体に懊悩する若者」を前面に押し
出している。

 「図らずも」なのかどうかは荒井の脚本はいつも「よく判らない」
のだが往年の個々の作品としてではなく映画界全体として持っていた
"熱さ"と、"厚さ"が本作から感じられる。それこそが制作側と荒井の
意図で且つ目的なのだろう。

 世良公則演じる森口昭夫は挫折していく自分を認められない"痛すぎる
設定の役柄"の為、演者が見つからずに世良まで廻ってきたという。

 昭夫の挫折に気付いてはいるが自らと向き合えない姿は多くの普通で
ある事を自覚せざるを得ない人々の心胆寒からしめる。誰も演じたがら
なかったのは当然で、引き受けた世良がまた実に良く似合っているのだが、
これは徒手空拳で人気を物にした世良は(多分)よく理解して演じていて
率直に称賛するべきだろう。
 
 昭夫の余りの見当違いを確信し断言するその台詞は、「間違い
ではないのか?」と思ってしまうほどで、観客に伝わる痛みは、荒井の
「目的」なのだろう。荒井はまたある程度まで計算で書いており、
ある程度以上は、現場の力を信じているのではと思われる。本作は
"それ"が成功した例だろう。

 演出家として出演し、実際に本作の演出も手掛けている蜷川幸雄も
作品のパワフルさ、熱さに多大な貢献をしている。監督、脚本、演出
それぞれが独自の方向に作品を引っ張ろうとする、そして引っ張っていく
広がる力そのもの自体が本作の大きな魅力で見どころだろう。荒井晴彦の指す
『映画』とは恐らくこういった方向性のものなのではないか。

 若手俳優達の熱量という「魅力」を引き出すために物語は破綻して
いても構わないという制作側の熱意、三田を中心とする中堅・ベテラン
俳優達のあるべきフォローとしての役割と観客に与える立ち位置の
安心感と安定感もまた観ていて楽しい

 ヒロインの決断と孤独。本作とは「逆」の結末に生きた世の中の
無数の人々。それはそれで幸せとも不幸とも言えないという人生という
ものの面白さ。
 
 今後、"時代の熱さ"をフィルムに焼き付けた事そのものが何度も
評価をされていく作品だろう。

 
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