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2020年5月 1日 (金)

映画「愛の渇き」

「愛の渇き」
 
原作: 三島由紀夫
監督: 蔵原惟繕
脚本: 藤田繁矢,蔵原惟繕
撮影: 間宮義雄
音楽: 黛敏郎
美術: 千葉和彦
出演: 浅丘ルリ子,石立鉄男,中村伸郎,山内明,楠侑子,小園蓉子,紅千登世


時間: 99分 (1時間39分)
製作年: 1967年/日本

(満足度:☆☆☆☆+ )(5個で満点)
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夫を亡くした悦子(浅丘ルリ子)は義理の父である弥吉(中村伸郎)と
関係を重ねる一方で使用人の青年三郎(石立鉄男)に惹かれていく。。
 

 旧世代の体現者として、一家の長としての権限を着実に行使し「家」を
堅持してきた弥吉。その権力掌握の強固さと手腕の見事さに手を出せずに
ヤサグレているだけの長男夫婦。
 
 浅丘ルリ子演じる未亡人の悦子はその活動を終えつつある『黒い太陽』
である弥吉に身を捧げる以外に成す術などない(なかった)。
 
 若さの無邪気な熱気に溢れる三郎を演じる石田鉄男も素晴らしい。

 アプレ世代の三郎は自らの熱と、その熱に悦子が勝手に翻弄されている
ことを知ってか知らずか判然としない。
 
 老成した長(おさ)、
 
 やさぐれる中間層、
 
 袋小路に陥った女、

 次世代の若者、、
 
 四者は互いの事情など意に介することなく、その事を一切表に出さない
事で完全な密室劇が構成されている。

 弥吉は、『力』で掌握し続けようとするが自身に迫りくる老いに限界を
感じている。
 
 長男夫婦は、自分達に弥吉の世代ほどの絶倫振りも権力を司る力も執着も
ないことを嫌というほど知り抜いている。
 
 悦子は、弥吉の長期政権時代の終わりを自覚しつつも流されていくしかない
自分を呪い、『復讐』を考え始める。
 
 三郎は、そんな大人達を内心では冷ややかに眺めている。

 彼らが一同に揃う食事のシーンは、これらの力関係が激しくつばぜり合いを
繰り返す瞬きも出来ない名シーンであり、本作の白眉である。

 『斜陽』という言葉を演出、演技、撮影、美術、音楽一体となって余すこと
なく映像化した傑作。
 
 原作者である三島由紀夫が激賞したのも頷ける秀作である。

 
 監督の蔵原惟繕(くらはら これよし)は「南極物語」(1983)の監督であり、
同作は配給59億円の大ヒットとなり1993年まで国内における配給収入歴代1位の
座にあった。
 
 蔵原惟繕と共に脚本を手掛けた藤田繁矢は藤田敏八(ふじた としや)として
「修羅雪姫」(1973)、「修羅雪姫 恨み恋歌」(1974)を監督している。
 
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