細野晴臣 音楽の軌跡
ETV 「細野晴臣 音楽の軌跡」
・細野晴臣についてはよく知らないのだが、というか
音楽全般についてどうしようもなく疎いのだが、
この番組の内容はなかなか良かったと思う。
細野晴臣の音楽が消失してしまうかもしれないという焦燥感は
自分なりに分かる気がした。震災が起こる遥か前から始まっていた
何もかもが底無し沼に吸い込まれて、決して戻ってこないような
気持ちの悪い何かとそこから来る絶望感。震災以降、その正体は何となく
見えてきたが、その吸い込まれていく感じは寧ろ加速しているようにも思う。
細野晴臣や坂本龍一等のYMOが何やら大変だ!(=凄い!)と騒いでいたのは
自分の周辺では、少し上の世代だった。自分はまだお子様で
音楽の何たるかを掴むまもなく、ビートルズだのJPOPだのの洗礼を
浴びる前にスターウォーズだ何だと映画の方に自分は向かっていった。
YMO(イエローマジックオーケストラ)の"YM"が何を意味するのか、
今回Webで検索して今更ながらに初めて知った。YMは充分世界に効いたといえよう。
細野晴臣がデビュー後まもなくして結成したというバンド"はっぴいえんど"の曲
「風をあつめて」が番組内で紹介されていたが、歌詞もメロディも今聴いても
新しいように感じる。寧ろ、その後のYMOによって造られた音よりも。
東日本大震災を経てその前後より後延々と続いている"大人災"の中で、
細野晴臣の自分は音楽をやるしかなく、その事が絶対的に幸福な事なんだ
という決意表明に強く共感するものがあった。
自分は"耳"を駆使する音楽ではなく、"視覚"を駆使して「見る」
ということにエネルギーを費やして生きてきた。だが今しばらくは、
余り使ってこなかった耳を使って音楽を探してみようと思っている。
細野晴臣やYMOの面々、松本隆といった人々の作品とまた
どこかで出会うことだろう。
ところで、番組全体のナレーションと前半の細野晴臣の聞き手となる
原田知世の変わらない美しさはとんでもないものがある。
流石に時を駆けただけのことはある。あれは実はフィクションではなかったのかも。
地に足が着いたような安心感をこの番組を通して得られた気がして、もの凄く久しぶりに
これまで録画してきた様々な人々の姿もまた見たくなってきた。 少しだけ元気でました。。
僕等はただ、音楽を聴いたり、奏でたり、
映画を観たり、作ったりして生きていきたいだけなんだ。
どうして、これほどまでに呼吸することすら困難な時代に
なってしまったのだろうか。誰かの許可を得なければ
本当に何も出来ない時代がもうすぐそこまで来ている。
どうしてこんな絶望的な事になってしまったのだろうか。
今ならまだ引き返すことができるかもしれない。
自分達がやりたいことに必死にしがみつけばいい。
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